【産廃コトバ図鑑 Vol.4】
リサイクルにも“三つの道”がある?「マテリアル・ケミカル・サーマル」使い分けてますか?
「この廃プラ、マテリでいける?」
「いや、汚れ強いからケミカルに流そう」
「それも無理ならサーマルで回すか」
——そんな現場の会話に出てくる3つのキーワード。
それが産廃業界における三大リサイクル方式:
- ✔ マテリアルリサイクル
- ✔ ケミカルリサイクル
- ✔ サーマルリサイクル
この3つ、すべて“リサイクル”だけど、内容も目的も違うんです。
1. マテリアルリサイクル:そのまま素材に戻す
最も王道的なリサイクル方法。
廃棄物を機械的に処理し、もう一度「素材」として再利用する方法です。
たとえば:
- ✔ 廃プラスチック → ペレット → プラ製品
- ✔ 金属くず → 精錬 → 新たな鋼材に
- ✔ 廃木材 → チップ → ボード原料
原形は変えても“物質そのもの”は使い続ける、循環の基本ルートです。
2. ケミカルリサイクル:化学の力で“分解・再合成”
廃棄物を化学的に分解し、モノを構成している化学物質レベルに戻す方法です。
たとえば:
- ✔ 廃プラスチック → 熱分解 → 油・ガス
- ✔ PETボトル → モノマー → 再生PET
- ✔ 難リサイクル系混合プラ → ガス化 → 合成燃料
マテリアルではリサイクル困難な素材でも、ケミカルなら再利用可能なケースが多いのが強みです。
近年は、CO₂削減や脱炭素に向けて「高度ケミカルリサイクル」の研究も活発です。
3. サーマルリサイクル:燃やして熱回収
廃棄物を燃やし、その際に出る熱を回収して利用する方法です。
たとえば:
- ✔ 焼却熱をボイラーで回収し、蒸気・発電に利用
- ✔ 廃熱を地域暖房に活用
- ✔ セメント工場で熱源として代替燃料に使用
「素材として使えない」「分解できない」ものでも、エネルギーとして有効利用する最後のリサイクル手段です。
3つのリサイクル、どう使い分ける?
| 種類 |
主な特徴 |
優先度 |
マテリアル
リサイクル |
素材そのまま再利用 |
★★★ |
ケミカル
リサイクル |
化学的に分解・再構成して再利用 |
★★☆ |
サーマル
リサイクル |
熱としてエネルギー回収 |
★☆☆ |
※ 環境省などの3R・循環経済に関するガイドラインでも、マテリアル > ケミカル > サーマルの優先順位が基本とされています。
まとめ:「リサイクル=良いこと」だけでは足りない
リサイクルには「マテリアル > ケミカル > サーマル」の優先順位があるとよく言われますが、
それはあくまで原則論。
実際の現場では…
- ✔ 再生のために過剰なエネルギーや薬品を使うケミカルリサイクル
- ✔ マテリアル再生しても品質が低く再利用が難しいケース
- ✔ 距離や設備条件によってサーマルの方がCO₂排出が少ない事例
など、物によっては“下位のリサイクル”の方が環境負荷が小さいこともあるのです。
だからこそ大切なのは、
「形式的な優先度」ではなく、そのリサイクル方法が“本当に意味のある循環”につながるのか?
という視点です。
