リチウムイオン電池がごみに混ざると危険! 廃棄物処理施設で相次ぐ火災の実態と、排出事業者が行うべき対策【2026年版】
#コラム
2026.08.01
リチウムイオン電池がごみに混ざると危険!
廃棄物処理施設で相次ぐ火災の実態と、排出事業者が行うべき対策【2026年版】
スマートフォン、モバイルバッテリー、電動工具、コードレス掃除機など、私たちの身の回りにはリチウムイオン電池を使用した製品が数多くあります。
小型・軽量で繰り返し充電できる便利な電池ですが、廃棄方法を誤ると、ごみ収集車や廃棄物処理施設で火災を引き起こす原因になります。
特に問題となっているのが、リチウムイオン電池が廃プラスチック類や金属くず、不燃ごみなどに紛れ込んだまま、圧縮・破砕されるケースです。電池が潰されることで内部短絡、いわゆるショートが発生し、発煙、発火から大規模火災へ発展することがあります。
こうした事故は家庭ごみに限った問題ではありません。工場や事業所から排出される電動工具、計測機器、通信機器、作業服用ファン、パソコンなどにもリチウムイオン電池が内蔵されています。
本記事では、全国の火災発生状況や被害額、発火の仕組みを確認しながら、排出事業者、収集運搬業者、処理業者が取り組むべき対策を解説します。
全国で年間2万件を超える発煙・発火事故
環境省の資料によると、令和5年度には、ごみ収集車や一般廃棄物処理施設において、リチウムイオン電池等に起因すると疑われる発煙・発火を含む事故が21,751件発生しました。
このうち、職員や消防隊による消火活動が必要になった事故は8,543件です。単純計算では、全国のどこかで1日当たり約60件の発煙・発火が発生し、そのうち約23件で消火活動が行われたことになります。令和5年度に消火を要する事故が確認された市区町村は226に上ります。
発生場所の内訳は、次のとおりです。
- 破砕・選別・圧縮等を行う再資源化施設:18,892件
- ごみ焼却施設・ごみピット:1,236件
- 収集運搬車両:192件
- その他の施設:1,431件
全体の約87%が、破砕、選別、圧縮などを行う施設で発生しています。リチウムイオン電池が、機械的な衝撃や圧力を受けたときに発火しやすいことを示す数字です。
なお、この21,751件は、主に市区町村を対象とした一般廃棄物処理実態調査に基づく数値です。産業廃棄物処理施設の事故をすべて集計した件数ではありません。しかし、電池が圧縮・破砕されて発火する仕組みは、一般廃棄物でも産業廃棄物でも共通しています。
火災による被害額は約100億円規模との推計も
リチウムイオン電池による火災は、設備の一部が焦げるだけでは終わらないことがあります。
国立環境研究所の研究を基にした環境省資料では、令和3年度に発生した関連火災による被害総額は、約96億円から約108億円と推計されています。この金額には、設備の修理費用や自治体の負担だけでなく、施設停止中に他の自治体や施設へ処理を委託した費用も含まれます。
一般廃棄物処理実態調査で報告された実績値でも、令和4年度は約14億円、令和5年度は約26億円の被害が発生しています。
環境省の資料では、大規模火災の事例として次のような被害も紹介されています。
埼玉県上尾市の施設では、火災によって約9か月半にわたり稼働が停止し、復旧工事費として約4億7,700万円、停止期間中の委託処理費として約5,000万円を要しました。
東京都府中市では、大規模火災によって施設の一部が約1年半使用できなくなり、コンベヤ、磁選機、粒度選別機、電気系統などが損傷しました。
栃木県宇都宮市の事例では、市のごみ処理能力の約7割が失われ、市民にごみ排出量の削減を求める事態となり、被害総額は55億円とされています。
火災が発生すると、施設の修理費だけでなく、処理停止、代替施設への運搬、委託処理、周辺事業者への影響など、損失が連鎖的に広がります。
火災動画で分かる「破砕された瞬間」の危険性
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)は、リチウムイオン電池を使用した製品が、ごみ処理施設で破砕された際に発火する様子を再現した動画を公開しています。
再現映像では、加熱式たばこ、カメラ用バッテリー、モバイルバッテリーなどが破砕機で潰され、しばらくしてから発煙・発火します。外見上は普通の小型製品でも、内部の電池が変形した瞬間に火災の原因へ変わることが分かります。
環境省も、2025年5月にリチウムイオン電池が原因で火災が発生した産業廃棄物処理施設を取材し、実際の被害や現場の声を紹介する啓発動画を公開しています。火災は自治体の施設だけでなく、民間の産業廃棄物処理施設でも現実に発生している問題です。
動画を見ると、「小さな電池一つくらいなら大丈夫」という認識が、いかに危険であるかが分かります。
リチウムイオン電池はなぜ燃えるのか
リチウムイオン電池の内部には、正極、負極、両者を隔てるセパレーター、電解液などが入っています。
セパレーターは、正極と負極が直接接触しないようにする重要な部材です。しかし、落下、圧縮、破砕、変形などによってセパレーターが損傷すると、正極と負極が接触し、内部短絡が発生することがあります。
短絡した部分には大きな電流が集中し、急激に温度が上昇します。さらに、リチウムイオン電池には可燃性の有機溶媒を使用した電解液が含まれているため、内部温度が上昇すると、ガスの噴出、破裂、発火へつながる可能性があります。
主な発火のきっかけには、次のものがあります。
- 破砕、圧縮、落下などによる内部損傷
- 端子同士や金属との接触による外部短絡
- 過充電、過放電
- 高温環境での放置
- 製造時の異物混入や内部不良
- 非純正バッテリーや適合しない充電器の使用
- 経年劣化や膨張、変形
廃棄物処理の場面で特に問題となるのは、破砕機や収集車の圧縮板によって電池セルが変形し、内部短絡が起こるケースです。
一度始まると止まりにくい「熱暴走」とは
リチウムイオン電池火災を理解するうえで重要なのが、熱暴走です。
熱暴走とは、電池内部で発生した熱が、さらに別の発熱反応を引き起こし、温度上昇を制御できなくなる状態です。
短絡などによって電池内部の温度が上昇すると、内部物質の分解反応が進みます。その反応によってさらに熱や可燃性ガスが発生し、発煙、破裂、発火へと進みます。
複数の電池セルを組み合わせたバッテリーパックでは、一つのセルから発生した熱が隣のセルへ伝わり、次々と熱暴走が広がることもあります。NITEは、熱暴走を「発熱がさらなる発熱を招く正のフィードバックによって、温度を制御できなくなる現象または状態」と説明しています。
このため、表面の炎が一度消えたように見えても、内部で反応が続いている可能性があります。
どのような製品に使われているのか
リチウムイオン電池は、電池単体だけで排出されるとは限りません。製品の内部に組み込まれ、外から電池が見えないものも多くあります。
代表的な製品には、次のようなものがあります。
- モバイルバッテリー
- スマートフォン、タブレット、ノートパソコン
- 加熱式たばこ、電子たばこ
- コードレス掃除機、ロボット掃除機
- 電動ドリル、電動ドライバーなどの電動工具
- ハンディファン、作業服用ファン
- 電気かみそり、電動歯ブラシ
- ワイヤレスイヤホン、ヘッドセット
- デジタルカメラ、ビデオカメラ
- 電動自転車、電動キックボード
- ポータブル電源
- 電動式玩具
- ハンディターミナル、計測器、通信機器
- 非常用・バックアップ用電源
令和5年度の環境省調査で発生品目が特定されたものでは、モバイルバッテリーが171件と最も多く、加熱式たばこ115件、コードレス掃除機73件、スマートフォン33件、電気かみそり32件、電動工具22件などが続いています。
「充電して繰り返し使う製品」「USBケーブルで充電する製品」には、リチウムイオン電池が内蔵されている可能性があります。
廃棄物処理施設では何が起きるのか
廃棄物処理施設へ搬入された廃棄物は、荷下ろし、保管、投入、手選別、破砕、磁力選別、圧縮、搬送など複数の工程を通ります。
リチウムイオン電池が混入していると、次のような場所で発火する可能性があります。
受入れ・保管場所
荷下ろし時の衝撃や、廃棄物の積み重ねによる圧力で、すでに損傷していた電池が発火することがあります。
破砕機・圧縮機
回転刃や圧縮装置によって電池が潰され、内部短絡が起きます。火災が発生しやすい代表的な工程です。
コンベヤ
破砕後の電池片や高温の破砕物がコンベヤで運ばれ、別の場所へ火種を運んでしまうことがあります。
破砕後の保管ヤード
処理時には気付かなかった電池片が、時間をおいて発火することがあります。周囲に廃プラスチック類や紙くずなどの可燃物があると、火災が広がりやすくなります。
小さな電池一個の混入が、機械設備の焼損、操業停止、従業員の負傷につながりかねません。
工場・事業所での保管中にも火災は起こる
危険なのは、廃棄物処理施設へ搬入した後だけではありません。
工場や事業所では、使用済みの工具用バッテリー、故障したモバイル機器、返品された製品、不良品、膨張した電池などを、長期間まとめて保管しているケースがあります。
次のような保管方法は特に危険です。
- 電池を金属製の箱に無造作に入れる
- 端子を露出したまま大量に積み重ねる
- 廃プラスチック類や紙くずと一緒に保管する
- 雨水がかかる屋外で保管する
- 直射日光が当たる場所や高温の倉庫に置く
- 膨張・変形した電池を正常品と一緒に保管する
- フォークリフトや車両が接触する場所に置く
- 中身を確認せず、廃電気機器を金属くずとして排出する
膨張や変形が生じた電池について、環境省は自然発火の可能性があるとして、回収、保管、処理方法の検討を進めています。通常品と同じ感覚で取り扱わず、充電、分解、穴あけ、押し潰しなどを行わないことが重要です。
排出事業者が行うべき対策
火災を防ぐうえで最も効果的なのは、処理施設へ搬入される前に分別することです。
1.電池使用製品を把握する
事業所内で使用している充電式機器を洗い出します。工具、情報通信機器、作業用品、計測機器、非常用電源など、部署ごとに確認することが大切です。
2.他の廃棄物と混ぜない
リチウムイオン電池や電池使用製品を、廃プラスチック類、金属くず、混合廃棄物などに混入させないよう、専用の分別区分を設けます。
環境省も、事業所や工場から排出する場合は、リチウムイオン電池等を分別し、処理可能な産業廃棄物処理業者へ委託するよう案内しています。
3.正常品と異常品を分ける
正常な電池と、膨張、変形、破損、水濡れ、焼損、液漏れなどがある電池を分けます。異常品は処理方法や運搬条件が変わる可能性があるため、必ず事前に状態を伝えます。
4.端子の短絡を防止する
取り外した電池は、端子が金属や他の電池と接触しないよう絶縁します。ただし、膨張・破損した電池を無理に取り外したり、分解したりしてはいけません。
5.数量と状態を記録する
製品名、メーカー、型式、電池の種類、数量、重量、破損の有無を整理し、可能であれば写真を残します。
6.処理業者へ事前に情報を伝える
「電池が入っているかもしれない」ではなく、分かる範囲で含有の有無や状態を明確に伝えます。
政府の総合対策では、収集運搬・保管時に他の廃棄物と区分することに加え、委託契約書、WDS、マニフェストなどにリチウムイオン電池や使用製品であることを明示する仕組みの構築が示されています。具体的な制度化を待つだけでなく、現在の委託実務でも情報共有を徹底することが重要です。
収集運搬業者が注意すること
収集運搬業者は、回収前に排出物の内容、電池の状態、数量、荷姿を確認する必要があります。
一般的な廃棄物と同じようにパッカー車で圧縮したり、電池を積み込んだ容器を乱暴に扱ったりすると、輸送中の発火につながる可能性があります。
運搬時には、少なくとも次の点を確認します。
- 他の廃棄物と区分されているか
- 容器内で移動、衝突、圧縮されないか
- 端子の短絡防止措置が行われているか
- 膨張、変形、液漏れなどがないか
- 荷崩れや落下の可能性がないか
- 高温や雨水の影響を受けないか
- 排出事業者から処分先まで情報が引き継がれているか
電池の種類や状態、輸送量によって適切な容器や運搬方法は異なります。外観異常があるものは、通常品と同じ条件で安易に回収せず、処分先と協議してから運搬条件を決めることが重要です。
処理業者側に求められる対策
排出段階で分別を徹底しても、予期しない混入を完全になくすことは簡単ではありません。そのため、処理施設側にも多層的な対策が必要です。
主な対策には、次のようなものがあります。
- 搬入予約時の内容確認
- 契約書、WDS、マニフェストによる情報確認
- 荷下ろし時の目視検査
- 破砕前の手選別
- 電池を発見した場合の隔離場所の設置
- 膨張・破損品の受入基準の明確化
- 破砕機やコンベヤ周辺の温度監視
- 赤外線カメラ、炎検知器、煙検知器の設置
- 異常検知時の設備自動停止
- 散水設備など延焼防止設備との連動
- 保管ヤード周辺の可燃物管理
- 火災訓練と緊急連絡体制の整備
国も、民間処理施設へのX線やAIを利用した高度選別設備、発火検知と設備停止・散水・警報を連動させるシステムの導入支援を進めています。
設備対策だけでなく、「リチウムイオン電池がどこから混入したのか」を排出事業者までさかのぼって確認し、再発防止につなげる仕組みも必要です。
よくある質問
Q1.電池を使い切れば発火しませんか?
表示上は残量ゼロでも、電池内部にエネルギーが残っている可能性があります。使用できなくなった電池や長期間放置された電池でも、短絡や圧縮によって発火するおそれがあるため、一般廃棄物へ混ぜてはいけません。
Q2.端子にテープを貼れば、他の廃棄物と一緒に出せますか?
端子の絶縁は短絡防止に有効ですが、絶縁しただけで混合廃棄物として排出してよいわけではありません。電池や電池使用製品として分別し、処理可能な業者へ委託する必要があります。
Q3.製品から電池を取り外せない場合はどうすればよいですか?
無理に分解すると、電池を傷付ける可能性があります。電池内蔵製品として、メーカー名、型式、数量、状態を処理業者へ伝えてください。
Q4.膨らんだモバイルバッテリーを押して元に戻してもよいですか?
押す、穴を開ける、分解する、充電するなどの行為は危険です。可燃物から離し、人が不用意に触れないようにしたうえで、消防機関や対応可能な処理業者へ相談してください。
Q5.火が出た場合は、どの消火器を使えばよいですか?
電池の大きさ、構造、周囲の可燃物などによって対応が異なるため、すべての火災に共通する一つの消火方法はありません。煙や炎が激しい場合は近づかず、避難と119番通報を優先してください。
NITEは、ポケットに入る程度の小型モバイルバッテリーについて、火花が収まった後に大量の水をかけ、可能であれば水没状態を保ち、消防機関へ通報する方法を紹介しています。ただし、大型バッテリーや大量保管、廃棄物火災にそのまま適用できるとは限りません。事業所では、所轄消防署と事前に対応計画を確認しておくことが重要です。
Q6.事業所から出た少量の電池を自治体の回収箱へ出せますか?
自治体の回収制度は、主に家庭から排出されるものを対象としている場合があります。事業活動から発生したものは、自治体、メーカーの回収制度、処理業者の受入条件を確認し、適切なルートを利用してください。
関西クリアセンターへ相談するメリット
リチウムイオン電池は、電池の種類、容量、形状、破損状態、製品への内蔵状況によって、安全な運搬方法や処理ルートが異なります。
関西クリアセンター株式会社では、まず次のような情報を確認します。
- 電池単体か、製品に内蔵されているか
- 製品名、メーカー、型式
- 数量、重量、荷姿
- 膨張、変形、破損、液漏れ、水濡れの有無
- 保管場所と搬出条件
- 排出予定時期
- 継続的な排出か、一度限りの在庫処分か
これらの情報を基に受入可否を確認し、自社グループや協力会社とも連携しながら、案件に適した収集運搬・処理方法をご提案します。
- 「電池が入っているか分からない」
- 「壊れた電動工具をまとめて処分したい」
- 「膨張したバッテリーがある」
- 「廃プラスチック類に混入する可能性がある」
- 「全国の複数拠点から回収したい」
このような場合は、他の廃棄物へ混ぜる前にご相談ください。写真、メーカー名、型式、数量、破損状況などをご共有いただくことで、より安全かつ円滑に処理方法を検討できます。
まとめ
令和5年度には、ごみ収集車や一般廃棄物処理施設で、リチウムイオン電池等に関係する発煙・発火が21,751件発生し、そのうち8,543件で消火活動が必要となりました。
火災が大規模化すると、設備の修理費だけでなく、長期間の操業停止、代替処理費、地域の廃棄物処理能力の低下など、社会全体へ大きな影響を及ぼします。
事故を防ぐために最も重要なのは、排出段階で電池や電池使用製品を見つけ、他の廃棄物と混ぜないことです。
排出事業者、収集運搬業者、処理業者が、それぞれの段階で情報を共有し、分別、保管、運搬、受入れを適切に行うことが、火災防止への一番確実な一歩です。
リチウムイオン電池や電池内蔵製品の処分にお困りの際は、関西クリアセンター株式会社までご相談ください。
※本記事は2026年7月28日時点の公表資料に基づいて作成しています。電池の種類や状態により、適用される法令、運搬条件、処理方法が異なる場合があります。必ず事前に処理業者、関係行政機関、消防機関等へご確認ください。


