組織における役割と責任
役職は「偉さ」ではない
――一般社員・主任・課長・部長、それぞれの役割
会社には、一般社員、主任、課長、部長など、さまざまな役職があります。
では、それぞれの違いを説明できますか。
「主任は一般社員より偉い人」
「課長は主任より上の人」
「部長は課長より権限がある人」
もし、それだけの理解になっているなら、少し危険です。
役職とは、本来、偉さを示すためのものではありません。
役職が上がるということは、責任を持つ範囲が広がり、判断する範囲が広がり、関わる人が増え、考える時間軸が長くなるということです。
つまり、
役職が上がる=偉くなる
ではなく、
役職が上がる=背負うものが増える
と考えた方が、組織の実態には近いでしょう。
一般社員――まずは自分の仕事に責任を持つ
一般社員に求められる基本は、任された仕事を理解し、決められたルールや手順を守り、安全・品質・期限を意識して確実に遂行することです。
ただし、「言われたことだけやればよい」という意味ではありません。
仕事をしていれば、
「このやり方は危ないのではないか」
「もっと効率よくできるのではないか」
「この情報は早めに共有した方がよいのではないか」
と気づく場面があります。
そうしたときに、報告・連絡・相談を行い、必要に応じて改善につなげることも大切な役割です。
一般社員の役割を一言でいえば、自分の担当業務に責任を持つこと。
ここが組織の土台です。
主任――「自分」だけでなく「周囲」を見る
主任になると、自分の仕事ができるだけでは足りなくなってきます。
周囲の状況に目を配り、後輩や新人を支え、現場で起きている小さな問題を拾い上げる役割が加わります。
主任は会社によって位置づけが違いますが、一般的には現場リーダーとしての役割を担うことが多いでしょう。例えば、
- 新人や若手への指導
- 作業手順やルールの共有
- 現場の困りごとの把握
- メンバー間の情報共有
- 上司への早期報告
- 日常業務の改善
などです。
ここで、多くの人が一度つまずきます。それが、「自分でやった方が早い」という考えです。
確かに、自分でやった方が早い場面はあります。でも、それを続けている限り、周囲は育ちません。
主任に求められるのは、自分ができることだけではなく、
人に教えること。
人を助けること。
人ができるようにすること。
です。
一般社員が「自分の仕事を見る人」だとすれば、主任は、自分の仕事をしながら、周囲にも目を配る人と言えます。
課長――「自分が成果を出す」から「チームで成果を出す」へ
課長になると、責任の単位が大きく変わります。自分自身の仕事だけではなく、課やチーム全体の成果に責任を持つ立場になります。
売上、生産性、安全、品質、コスト、納期、人材育成。管理する項目は部署によって違いますが、本質は同じです。
課長の役割は、チームが機能し、継続的に成果を出せる状態をつくることです。
そのためには、
「誰に何を任せるか」
「仕事が一部の人に偏っていないか」
「問題が放置されていないか」
「メンバーが成長しているか」
「目標に向かって進んでいるか」
といったことを見なければなりません。
優秀なプレイヤーだった人ほど、自分が前に出て解決したくなります。でも管理職になった後も、それを続けてしまうと、組織としては弱くなります。
課長に求められるのは、自分で結果を出すことから、人を通じて結果を出すことへの転換です。
部長――目の前の仕事だけでなく、組織全体を見る
部長になると、さらに視野が広がります。課長が一つの課やチームを見る立場だとすれば、部長は複数のチームや機能を束ね、部門全体として成果を出す立場です。
そのため、日々の業務だけではなく、
「部門として何を伸ばすのか」
「人員や予算をどこに配分するのか」
「どんな人材を育てるのか」
「今の仕組みを続けてよいのか」
「数年後、どんな組織であるべきか」
といったことを考える必要があります。
課長と部長では担う時間軸が異なり、部長にはより長期の戦略や組織設計が求められます。一般的な組織論でも、上位の役職ほど個別業務よりも、資源配分、組織設計、意思決定、将来への備えといった仕事の比重が高くなります。
部長が現場の細かい仕事ばかりをしていると、課長が課長の仕事をする機会を失います。課長が主任の仕事をし、主任が一般社員の仕事をするようになる。すると、上に行くほど忙しいのに、誰も本来の仕事をしていないという状態になります。
役職が付いた途端に偉そうになる人
ここで、少し分かりやすい話をします。役職が付いた途端に、急に偉そうになる人がいます。
「俺は主任だから」
「俺は課長だから」
「部長の俺が言っているんだから」
こんな態度を取る人です。
しかし、それは役職の意味を勘違いしています。主任や課長、部長になったから、その人自身が偉くなったわけではありません。担当する範囲と背負う責任が大きくなっただけです。
むしろ、役職が上がれば上がるほど、人の話を聞き、周囲を支え、判断し、最後は責任を引き受ける立場になります。
肩書きを使って人を動かそうとするのではなく、「この人のためなら動こう」と思われる存在になることの方が、はるかに重要です。肩書きを振りかざして人を動かそうとした瞬間、その人はリーダーシップではなく、権威で仕事をしていることになります。
役職が上がったことで偉そうになる人がいるとすれば、それは、役職を与えられたことと、人間として偉くなったことを混同しているだけなのかもしれません。
上司の仕事は「部下の仕事を奪うこと」ではない
組織では、よくこんなことが起こります。
部長が課長の仕事をする。
課長が主任の仕事をする。
主任が一般社員の仕事をする。
経験のある上司がやった方が早い。確かに、短期的にはそうかもしれません。でも、それを繰り返すと部下は判断しなくなります。判断しなければ、失敗することもありません。しかし同時に、成長する機会もなくなります。
上司の重要な仕事の一つは、自分がやることではなく、部下に任せられる状態をつくることです。
任せることは、丸投げとは違います。
目的を伝える。必要な権限を渡す。途中で確認する。困ったときには支援する。最後は上司が責任を持つ。これが、本来の権限委譲です。
昇進すると、仕事の「種類」が変わる
ここを理解していないと、「仕事ができる人を昇進させたのに、なぜかうまくいかない」ということが起こります。
理由は単純です。役職が変われば、必要な能力も変わるからです。
一般社員では、自分でできる能力。
主任では、教える、支える、周囲を見る能力。
課長では、任せる、判断する、チームを動かす能力。
部長では、優先順位を決め、資源を配分し、組織の将来を考える能力。
が重要になります。
つまり、昇進とは、同じ仕事をより高いレベルでやることではなく、新しい種類の仕事を引き受けることでもあるのです。
役職が上がるほど、責任は自分に向かう
良い上司には、一つ共通するところがあります。
成果が出たときは、「みんなが頑張ってくれた」と言います。
一方で、問題が起きたときには、「最終的には自分の責任です」と言います。
逆に、組織を弱くする上司は、成果は自分の手柄にし、問題は部下の責任にします。それでは、人はついてきません。
役職が上がるとは、権利が増えることではありません。最終的に引き受けなければならない責任が増えることです。
そこを理解している人ほど、意外と偉そうにしません。なぜなら、自分の肩書きよりも、果たすべき役割の重さを知っているからです。
役職ごとの役割を整理すると
一般的な組織として整理すれば、次のように考えることができます。
| 役職 |
主な役割と責任 |
| 一般社員 |
自分の担当業務に責任を持つ。 |
| 主任 |
自分の仕事に加え、周囲を支え、現場をつなぐ。 |
| 課長 |
チーム全体の成果と人材育成に責任を持つ。 |
| 部長 |
複数のチームを束ね、部門の方向性、資源配分、将来に責任を持つ。 |
役職が上がるにつれて、
自分 → 周囲 → チーム → 組織
へと見る範囲が広がっていきます。
そして、
作業 → 支援 → 管理 → 経営に近い判断
へと仕事の性質も変わっていきます。
「誰が偉いか」ではなく「誰が何を担うか」
会社が強くなるために必要なのは、肩書きを増やすことではありません。それぞれの役職について、
- 「何を判断するのか」
- 「何に責任を持つのか」
- 「何を部下に任せるのか」
- 「どこから上司に相談するのか」
を明確にすることです。
一般社員には一般社員の役割があります。主任には主任の役割があります。課長には課長の役割があります。部長には部長の役割があります。どの役職が一番偉いという話ではありません。役割が違うだけです。
役職は、人を上から見下ろすためのものではありません。より広い範囲を見て、より大きな責任を引き受けるためのものです。
だからこそ、役職が上がるほど問われるのは、「どれだけ偉そうにできるか」ではなく、「どれだけ周囲を活かし、最後に責任を引き受けられるか」ではないでしょうか。